編集発行人 コサカが贈る勝手きままな
つれづれ日記です。ハッピーな日もブルーな日も
美味しい珈琲で、一息いれてください。


8月6日 東京の珈琲

2018年初のマザグラン_珈琲美美にて
森光邸で使っていたグラスを発掘され、
店で使うようにしたそうです。
はあ、ステキですねえ。





先日、一泊二日で上京し、デザイナーの
山口信博氏とフジローヤル読み物の打ち合わせを
南青山の丸山珈琲で行った。
ボリビアのナチュラルをフレンチプレスで。
2杯で900円くらいと値段も納得、美味しかった。
その後、イベントでもお世話になった
山陽堂書店に立ち寄って話をして本を買って、
大坊さん家へ。



いつもの折り目正しいシャツとズボンの大坊さんと、
紺に白の水玉模様のワンピースを着た恵子さんが
迎えてくれた。暑いですねえなんて靴を脱ぎながら、
親戚の家に帰ってきたような寛いだ気分

玄関には、庭から摘んだという
立派なシダの葉が生けてあった。

喫茶室のテーブルに座って話をしながら
まずメロンをごちそうになった。
甘い汁がたくさんつまった種の部分をとらず、
あえて残して切るあたり、大坊家の食レベルの
高さをうかがわせる。
それから、お煎茶。
お茶の苦みや渋みの話から、
今度8月にある「百草」でのイベントの話題へ。
大坊さんがファイルに入れた資料を見ながら、
「ももぐさでは皆さんが珈琲を飲んだあと、
空間を楽しんで、また珈琲が飲みたくなったら
券を買って寛いでというふうに一日ゆっくりと
過ごしてもらえたら嬉しいですよね」と静かに話す。

と、しばらくしたら、大坊さんが半ズボンをはく
大人の男性や茶髪がいやだという超個人的な話を始める。
「なんでみんな茶色にするんだろうね。
ここに茶色の髪と黒髪の人がいたならば、
世の中の8割から9割の人は、黒髪の方がいいって
いうと思うんだけど」という発言には、
「いやあ、そこまではないでしょう」と言って
別の話題にいこうとしたが、また黒髪の話を
しつこく蒸し返す大坊さんであった(笑)。



それから、100ccの珈琲をご馳走になり、
感想を言いあい、ひと息ついたら、
デミタスをいれていただいた。
店を開いて以来、ずっと自分自身の味覚を
信じてやってきたわけだけど、閉店するまで
ただの一杯だって自信をもって出したことなんて
なかったですと、大坊さんは言う。
でも大事なのは、自分の感覚や心の声に素直に
なって、そこから目を離さないことなんじゃないかと。
そんな話をうかがっていたら、町内放送だろうか、
17時のチャイムが鳴った。
そろそろおいとましようかなと思っていたら、
「すこし呑まない?」と大坊さん。
もちろんと快諾すると、一升瓶の新潟の酒を
でっかい片口にどぼどぼっと注いでくださる。
しかも大坊家のお猪口は、普通のお猪口の3杯分・・・。
ニコニコ笑って私たちをみていた
恵子さんが胡瓜の肉味噌のせと、魚の佃煮を
運んできてくれた。
ここは料亭か!!ヨッ、美人女将!
器づかいもすばらしいのです!



山陽堂で、大坊さんが好きそうな本を
見つけたのでプレゼントしたが、頭の片隅で
予測していた通り、すでに買っておられた。
『常世の花 石牟礼道子』若松英輔著・亜紀書房
ナニナニ?と嬉しそうにカバーをとった大坊さんが
「ああー、これ、持ってる。
今度ね、北海道に行く時に読もうと思って、
買ってたばっかりだったの。
ああー、買わないでおけばよかった」と残念そうであった。
大坊さんが持っていたら自分が読もうと
思っていたのでいいんですけど、
本を贈りあう間柄って、いいもんだなあ。
大坊夫妻は、キムホノさんの個展について
ただいま北海道旅行中です。
編集者の足立さんに、それならぜひPRをと
『珈琲屋』のチラシを大量に持たされたらしい(笑)。



『珈琲屋』の本ができるまでには、本当にいろんな
紆余曲折があり、私も最終的に円形脱毛になるまで
喜怒哀楽の感情をすべて使ったわけだけど、
それについて今、自分が思うことを話したら、
大坊さんが「・・・私は、今、あなたが言った
その言葉をずっと忘れることはないだろうと
思いますよ。本を出してから、今日ようやく
あなたともゆっくり話ができたなという気がしました」
と、しみじみ語っていた。
そんな大坊さんの珈琲が飲みたい方は、
岐阜県は多治見の「ギャルリももぐさ」へ!
今回は、写真展も8月11日から開催されます。

●●ギャルリももぐさ●●
百草夏百種展 後篇
2018 8/11 Sat ― 8/19 Sun / 11:00 ― 18:00

内田京子 / 高橋禎彦 / 安藤雅信 / PETER IVY KOBO /
トラネコボンボン / conte / KAY BOJESEN /
ふじっこパン / 百草衣生活研究処 / 菓子ここのつ /
大坊珈琲店

「珈琲屋」出版記念 | 大坊珈琲店 in 百草

8/18 Sat 13:00 〜17:00
8/19 Sun 12:00 〜16:00(予定)

百草 白い小屋 「大坊珈琲店」が百草に。
口の間から続く[白い小屋]に設えた、客席とカウンター。
大坊勝次さんが、ネルドリップで珈琲を淹れて下さいます。
どうか楽しみにいらして下さい。

百草[板の間]レジカウンターにて茶券をお求め頂き、
順番にご入室下さい。 お待たせしてしまう場合は、
「珈琲屋」写真展(土間・口の間)、
百草夏百種展(一階展示)、二階常設展示室を
ご覧になっていて下さい。
(順番になりましたらお呼び致します)


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翌日は、恵比寿の「珈琲トラム」へ。
店主の古屋さんは、9月19日の新店「珈琲屋 うず
開店に向けて、改装も大詰めに入っているらしい。
心身ともに忙しいのだろう、少し痩せていた。
「食べたい気持ちはあるんですけど、
何か入らなくて」とほほえみながら、
ネルドリップの点滴でモカをいれてくれた。
苦みの奥に耳をすますと凛と香る
大人っぽいモカ、最高に美味でした。
長髪の横顔をみていると、この人はきっと
前世から何代もこの髪型だったのではないか、
たとえばネイティブアメリカンとか武士とか、
そういう人だったのではないかと思えてくる。

「『珈琲屋』の大坊さんのあとがきに出てくる
お客様、僕も一度、珈琲をいれたことがあるんです。
たしか3グラムだったかな。そういう少量の粉に
湯をおとすのはかなり大変だし、珈琲の味としては
成り立ってはいないんですけど。
でも珈琲自体のことだけではない、
そこが珈琲屋の仕事なんだなって思うんですよね。
そのお客様は、ある日突然、お見えにならなくなって。
当時の先輩だった慶珈琲の宮澤さんとも、
最近お見えにならないねと話したことが
あったんですけど、宮澤さんも
あの文章を読んで号泣したって言ってました」


自分の珈琲が美味しくできるかどうか、
それだけが珈琲屋にとって大事なことではない。
それはつくづくそうだと思う。
自分の珈琲が気に入らなければ飲まなくていいと
はねつけるのは簡単だが、では、なんのための
人間の手によるネルドリップだ。
どうしても薄めのしか飲めない人には、
できる範囲でそうしてあげたらいいではないか。

カウンターを挟んで向かい合うふたりに
ながれる時間や想いを、無言で感じあう。
それは時として、パーフェクトな珈琲を出す
以上に大事なこと。
でもそれは逆にいえば、両者の間に、
いつもの珈琲があったから成立してきたわけで。
極限まで薄い珈琲しか飲めなくなっても、
それを真正面から告げることができたお客さまと、
普段どおりの一杯として、それを作り
差し出せた店主。
敬愛と信頼のやりとりは、崇高で美しい。
そんな話をしていると、一瞬で涙腺がゆるむのだった。
それにしても、古屋さんが喋り出す時の
ひそやかな唐突さというのは、大坊さんに瓜ふたつ。
「本当、似てますよねえ」と吹き出してしまった。



その後、久しぶりに「蕪木」へ。
インドネシア視察から戻ったばかりの蕪木さんは、
よく陽に灼けて髪も短くなってやんちゃさが復活していた。
豆香洞コーヒーの後藤さんと東京で少しだけ
話したそうで、あらゆる考察をした上で
珈琲をやっておられる、すごい方ですねと興奮していた。
自分なんかまだまだなのに、守りに入っている
場合じゃないと、おおいに刺激を受けたという。
また、ももぐさのイベントにも行きたかったが、
年中無休を貫いた大坊さんを思うと、
自分も店にいることが大事と考え直し、断念すると。
季節限定の珈琲ゼリーを頼んだら、
黒糖とラムの二種のゼリーに、シェーカーで
急冷したアイスコーヒーをたっぷり注ぐという
スタイルで登場した。
普通の珈琲ゼリーとは、発想がちがう。
食べ終わって面白いですねえと言ったら、
「僕、本当にひねくれているから、すみません」
と笑っていた。黒糖とラムは原料が同じだから
合う気がしてという発言に、なるほどと感心した。


また3つあるテーブル席の椅子が全部奥を向いて
座るように、つまりひとり用にセットされていた。
なんか列車みたいやねと言ったら、
「僕が喫茶店に行く時は、気持ち的に落ち込んだ時で、
そういう場合に座る席がなかったら
さらにがっくりくると思うんです。だからそれは、
なんとしても避けたいと。ふたり連れのお客様より、
ひとりの方が打撃が大きいといいますか、
おひとりのお客様の席だけは死守したいなと思って」と。
なぜ人は、喫茶店に行くのか。
深い珈琲でなければならないのか。
実体験からくる席の配置であり、店の在り方を
自分に正直に実行している点が清々しい。
伸び盛りの蕪木さん、もっともっと
外もみて勉強したいとイキイキしていた。
「小坂さん!僕の話ばかりですみません。
あと最後にもうひとつだけお話したいことがあって。
あ、最後じゃないかもしれないんですけど」 と、
ふたたび話しだす蕪木さん。
弟と同じ名前だし、姉になった気分であった。



喉のつまりは、日替わりで良くなったり
悪くなったり。でもそれでいいのだろう。
体もいい方に向かおうと、じりじり歩みを
すすめているに違いないと信じて見守ろう。
昨日は、生姜をたくさん買ってジンジャーシロップと
ついでにシナモンスティックをコトコト煮込んで
甘いジュースを作り、夏野菜スパゲッティを作った。
血液をつくる骨付きとり肉もできるだけ食べている。
低血圧&貧血気味なので、ともかく血流を増やして、
底力をつけたい。
最近、料理へのひんまがった苦手意識も
だいぶん消えた。普通に自分が食べたいものを
作れたら、それで十分ではないか。
さあ、そろそろ書きだす準備が調ってきたのを
感じている。『九州喫茶案内』完成に向け、
怖がる気持ちをはねのけ、
初心に戻って自分の感覚で書いていきたい。
それではまた明日。



                   (編集発行人 コサカ)



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